夢日記8

地元の友達と服なんか買いに行こうって話になったんだけど、僕はうっかり財布を持ってくるのを忘れてしまった。そんなわけで一同、僕の家までついて来てくれる次第になった。そんな道すがら、友人Oが話の話題になった。どうやら彼は大学も卒業し、23にもなったのだが、彼女はおろか未だに童貞らしい。顔は悪くない。むしろ女の子受けする部類なのだが、こいつぁあまりにも、もったいない。O君を童貞喪失させるのを一つ今年の目標にしようや、と盛り上がった。

そんなで自宅に着いたのだが、偶然、小学生の頃から顔なじみのある2つ上のお姉さんが訪れていた。簡単に挨拶なんかを交わしたあと、友人一人が滅多なことを言い出した。
「おい、あれは今年の目標だ。O君を呼び出して一つ手ほどきを受けさせてみてはいかがかと。」
冗談ではない。実を言うと、僕は子供の頃からこのお姉さんに思い入れがあった。O君の童貞喪失の為にお姉さんを利用されてなるものか。

不意に、僕は手を挙げた。関東在住の友人なら、僕自身、彼女はおろか未だ童貞であり、かつ小数の人間はそれが素人童貞であることを周知の通りであろう。O君の為にお姉さんが利用されるなら、という考えは、O君の童貞喪失のためなのなら、僕の童貞喪失のためであってもいいはずだという思考、情欲に切り替えられていた。O君なぞにさせてはならぬ、という信念よりは、もはやお姉さんとsexしたい!という性欲の奴隷に成り下がっていた。

流石にここは夢の中からなのだろう。僕たちの魂胆は手際よく進行し、お姉さんは少し恥ずかしそうながらも笑って了承してくれた。幼少期より共に学び(書道を)、共に遊びしお姉さんにいくばくかの思慕が芽生えぬことなどありえず、高校、大学とその関係は疎遠になりつつも、その思慕は枯れぬことなく心に久しく留まりしを、この思いが性交によりて開花するなぞ、夢にも思わん。興奮と緊張が交差する。段取りが分からず、侮られないかと不安にもなる。

壁越しに友人達が耳を側だてて聞いていると思うと甚だ忌ま忌ましいのだが、そんなことに気を取られていてはいかん。早速前戯に入ったが、肝心なことに気がついた。手元にコンドームなどがなく、避妊をする術を知らない。慌ててその旨を伝えると、一つ二つ、部屋の中にコンドームが投げ込まれた。すると、お姉さんはそのうちの一つを手に取った。お姉さん自ら僕に装着してくれるのかと興奮したのだが、何やら自分の股間をまさぐり出した。

何度も目を疑ったのだが、お姉さんはコンドームをその陰部に装着し始めた。一体どういうことだ。姉さん、なぜ、コンドームを着けることができるんだ。混乱して時空が歪む。すると、お姉さんが一言、
「弟だよ」
と、言い放った。
これ以上の説明はない。だから、推理していくしかない。お姉さんには弟がいるが、その弟が性転換したのだろう。単純明解。明晰にして判明。しばらくなにも言うことができず、弟の目をじっと見入った。お姉さんのものと見紛うほどに純朴な瞳だったので、心が吸い込まれそうになった。

僕は叫んだ。悲鳴に近い、決して大きな声ではないが、心の根底から搾り出された魂の咆哮。僕は我に返った。冷静になって考えると、通りでおっぱいが少し硬かったわけだ。全ての合点がいく。そしてこの状況。このままでは僕たちは兄弟になってしまう。途絶えることなく叫び続け、そのままトイレに入った。尿意と糞意で目が覚めた。

この夢は例年稀にみる、圧倒的にインパクトのある夢だ。思春期向える以前から思いを寄せていたお姉さんと共に寝るという甘美と陶酔、その全てを絶望の脅威へと転じさせ、一瞬にして僕の心に凝固させたるこの夢は、善きにつけ悪しきにつけ脳裏で反芻させては魅惑させたる魔の夢である。